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シルク・ドゥ・ソレイユ取材

2010.11.11

11世界有数のサーカス団として知られるシルク・ドゥ・ソレイユ。大掛かりでダイナミックなサーカスは、毎年日本でもツアーを行っている。宝箱を意味するサンスクリット語の“KOZA”からインスパイアされ創られた『KOOZA』もそのひとつ。今年2月からの日本公演に向けて、カナダでツアー中の『KOOZA』の取材に行ってきた。サーカスといえば「移動式テント」。移動式というからには簡易的なものを想像すると大間違いで、シルクのテントは非常に頑丈にできている。それもそのはず、頑丈にできていないと成り立たない舞台装置と、それを最大限に生かしたパフォーマンスが目白押しだからだ。高速で回る巨大な車輪の中でアーティストが飛び跳ねたり、ブランコで空中を舞ったり、地上7mでの命綱なしの綱渡りが次々と繰り広げられる。
22そしてそれを支えるのが、裏方の技術陣である。重たそうな道具を大量に腰からぶらさげて作業する彼らは、本番前もセットのメンテナンスに余念がない。アーティストが滑らないように器具を磨き、ねじひとつまで、しっかりと締める。本番中、真っ黒な服に身を包み小さな懐中電灯ひとつで走る姿はアーティストと同じくらいかっこいい。『KOOZA』の取材で気づいたのは、どのパフォーマンスもアーティストと技術陣のあうんの呼吸が肝だという事だ。
器具の重さなどの微調整にはじまり、本番中のセットチェンジ、更にはパフォーマンス中のロープを吊り上げるタイミングまで、アーティストと共にショーを創り上げている。実際、本番中の暗い照明の中でもアイコンタクトをかかさなかったり、出番直後の舞台裏で今日の出来を確認しあったりするようで、そこから生まれる信頼関係は強い。そんな裏方の仕事を考えながら鑑賞すると、また一味もふた味も違った見方になって面白い。そんな息つく間もないアクロバティックなシルク・ドゥ・ソレイユのショーなら、『KOOZA』でなくても一度は見たいものであるが、実は昨年、シルク・ドゥ・ソレイユは満を持してNYブロードウェイに進出しようと、『BananaShpeel』というショーを発表、常設公演としてブロードウェイデビューを飾った。
31制作費は15億円を超えたが結果は、「惨敗」。数々の演劇・ミュージカルで目の肥えたニューヨーカーからの酷評を受け、早々と終了を余儀なくされてしまった。ブロードウェイでサーカスは変り種で人気が出るのかと思ったら、そうでもなかったようだ。
現在はあのマイケル・ジャクソンを主題にしたショーや、ラスベガスでのビートルズやエルビス・プレスリーの常設公演もあるようだが、そこはやはりサーカス、世界各国を旅するシルク・ドゥ・ソレイユの「移動式テント」が近くに来たら、足を運んでみる価値はありそうだ。(11/11/2010)

Yuki Habu / 羽生 有希

技術コーディネート、音声
あだ名: ぶーきち
特技: ハンダ付け
好きな動物: パンダ
好きな野菜: ハンダマ